東京セブンローズ

時間のあるときにしか読めないものをと思い、

井上ひさしの『東京セブンローズ』を読みました。


終戦前後の東京を背景に、

明るく、闊達に生きる市民の日常を日記文学の形式で細密に描いたこの作品は、

すべて旧漢字・旧仮名遣いでかかれています。

それに主人公の特技がガリ版だったりして、

文字好きの方には(たぶん)たまらない小説。

(ちなみに単行本の本文書体はモトヤ明朝で、

下町で団扇屋を営む一市民の日記という体裁にとてもよくハマっていると思います)


この一年、サイトを通じて、

日本語について自分なりに考える機会が前より多くなったことや、

終戦記念日の空気と相まって、

いやもう何だか、本当にこみあげてくるものがありました。


久しぶりにこの本をちゃんと読みたくなった理由でもあるのですが、

高橋一清さんという元文藝春秋の有名な編集者の方が最近出版された

『作家魂に触れた』(青志社)(すんごいタイトルです)という本の中で、

まさにこの『東京セブンローズ』を中心に、

井上ひさしとFAXで何度も交わした手紙が公開されています。


感動的なことが書いてあるわけでも何でもないのに

(いってみれば原稿の催促と、〆切に間に合わない作家のあの手この手)、

おふたりの細やかな日本語からにじみ出るユーモアと温かさに、

なぜか泣けてしまいます。


同じ言語を、同じように信頼している者同士だからこそ得られる幸福。


私もこんな素敵な手紙を書ける人になりたいなあ。



それにしても最近はあまりお目にかからないこの厚さ。


腕が疲れるくらい重いのですが、そのことを忘れてしまうほど

ずっと読んでいられるおもしろさ。

これがもし電子書籍だったら絶対に最後まで読みきれないと思うのは、

本というものの不思議でしょうか。


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